美は永遠の謎

伊藤聖和

いい横顔、クール!かっこいい!

とはいっても、俺もいい年。自分の顔を自慢していてもしようがない。

このカメラの向こうには若くて美人の女性モデルがいる。

モデルに負担のかからないように短時間で仕上げるためには

彼女が気分よくリラックスして自然にふるまえるように

こちらも笑顔と体形と身だしなみに気を付けるのがエチケットだ。

カメラマンはもともと狩猟民族の遺伝子を強く持つのかもしれない。

美しい獲物を見つけると、自然に心が燃える。

現代ではそのままの狩人は犯罪者だが、

カメラを手にしているとなぜだか、狩人という言葉を思い出す。

腕のいい狩人になりたい。

人よりも大きな獲物をしとめ自慢したい。

美しいものをより美しく撮りたい。

「美」とはもともと大きな羊から作られた文字だという。

大きいから美しいのか、美しいからより大きく見えるのか。

それについてはもちろん後者だと俺ははっきり言える。

美しいものならどんなに小さなものでも大きく撮れるから。

ただ、心を動かす美しいものを俺はどうして美しいと思うのか。

あえて言うなら、それは遺伝子レベルの衝動。

それはこの地球にどうして生命が、そして人類が誕生したのかと

同じくらい大きな永遠の謎。