2019.12.19
大月和弘
窓側に座れなかったニューヨーク行きの機内で外の景色を眺めつつ、フランクシナトラのニューヨーク,ニューヨークを何度もリピートして聴いていた。
みんなに伝えたい
今日、俺が旅立つことを
あの大都会の一部になりたい
ニューヨーク、ニューヨーク
この靴がさすらい人となって迷い込みたがっているあの大都会のど真ん中へと
ニューヨーク、ニューヨーク”
四年ぶりに訪れるニューヨーク。あの時に感じたエネルギー、解放感、刺激を再び求め、僕は会社に短期の休みをもらいニューヨークに向かった。
そう、僕は一刻も早くニューヨークの街の一部となり、迷い込みたかった。
着いたのは午後12時過ぎチャイナタウン。
もうすでに夜中になってしまっていたが一刻も早く写真を撮りたかった僕はKYOCERAのTproofをポケットに忍ばせ、人気のなくなったチャイナタウンを徘徊するように歩いた。
間も無く歩いていると目の前にカップルらしい男女の二人を見つけ、写真を撮らせて欲しいと頼んだ。彼らは素性の知らない僕に対して“もちろん”と答えてくれた。
あぁこれだ、この感覚。この寛容さこそがニューヨークの一つの魅力なのだ。僕は着いて早々にここに来たのは正解だったのだと実感した。
早朝に行ったコニーアイランドはこの時期はオフシーズンで釣り人とランナーしかいない寂しく虚しい海岸となっていた(旅行前の下調べを全くしていなかった為)。これでは僕の地元、茅ヶ崎の海岸となんら変わらないではないか。
貴重な時間を潰してしまったと焦りつつも海を見つめカモメに睨まれながら食べたBBQサンドイッチはとても美味しかった。
タイムズスクエアはやはり異様なエネルギーを醸し出していた。巨大な建物の中を行き交う、洒落たニューヨーカー、ホームレス、変人、観光者。道路ではクラクションのパレード。あちらこちらの情報量の多さに圧倒されつつもそれを楽しみながら写真を撮ることができた。
そして相変わらず全てのものがデカい。食べてるバーガーがデカければそれとお供のコーラもデカい。店頭に飾る植木もデカい。そして何より人のサイズが日本とは格別にデカい。これが俗にいうアメリカンサイズか。。
ニューヨークの地下鉄は危険という記事をよく見るが僕にとってはあそこほど面白いところはない。
勿論、ホームレスが多く、ゴミや悪臭はとてもひどいものだがニューヨークに来て地下鉄を乗るというのはそれだけでも一つの大イベントである。ホームに向かえば生のゴスペル、jazz、カントリーが聴け、電車に乗り込むとラップやダンスが繰り広げられる。披露する場所は華やかしいステージではないが彼らにとって路上とは立派なステージなのではないかと考えさせらる。
今回のニューヨークの旅でお気に入りの場所が一つできた。
それはマンハッタンの最南端に位置するスタテンアイランドとガナバーズ島を結ぶサウスフェリーだ。
ほとんどがフェリーに乗るためだけの観光客が乗船するのだが、中にはフェリーを交通の手段として使っている人もいる。その乗客の中にご年配の夫婦であろう方が居た。僕はそれまでのスナップと同様に一旦声はかけずにいきなりにカメラを向けてみた。するとそのカメラに気づいたお二人はこちらに満面の笑みとポーズをしてくれたのだ。僕も思わずつられて笑みがこぼれた。
この一瞬、写真というのは善意ある感情を持つだけで、これだけの素晴らしい表情や出来事を収めることができる存在であることを確信した。
その後に見た、夕日に照らされた海と自由の女神は今回の旅を象徴するように綺麗な清々しい景色に思えた。
さらばニューヨーク、ニュヨーク。またすぐに。